いよいよ石積みの最終段階、、、この後屋根の下見板を張っていくんだが、石壁の上部も屋根の傾斜に合わせていかなければならん、、、そうしないと下見板と壁との間にスキマができてしまうからね、、、だから垂木を組んだからと云って板を並べてドンドン打ち付けていくというワケにはイカンのだよユウジ!
ところでここの石は下の写真で判ると思うが3種類あって、一番目が黒っぽい鉄平石のような薄い板状の石だ、、、硬くてこの地方の屋根に使われている、、、質が良ければ広い板が取れるんだが、この山にあるヤツは砕けやすくて屋根石に使えるほど大判のモノは取れない。
2番目の石は泥岩で、石と土が混ざった状態だな、、、脆くてハンマーで叩くと簡単に崩れてしまう。
3番目の石も泥岩だが、一応塊りになっていて2番目のヤツより粘りがあって、ハンマーで簡単に削れるので積みやすいんだ。
最初は硬い石の方が堅牢だと思って1番目の石を選り出して使っていたんだが、厚みが無くて積み上げていくのに時間もかかり、目地用のモルタルもたくさん消費する、、、それで泥岩を使うようになったワケだが、、、積んでるうちにだんだん石の気持ちというか石の意思というか、、、そういう感じがなんとなく感じるようになってきてね、、、まあ見ての通り、機械で切り出すワケじゃなくて、ユンボの爪と削岩機で崖を崩すんだから形は様々だ、、、それをひとつひとつ見比べながら積んでいく、、、するとなんとなく「俺はここに座りたい!」と石が望んでるような感じがするんだよ、、、上の写真はまだ切り崩してなくて、10数メートルの崖を支えている石の壁だが、、、この状態では石全体に「俺たちは崖を支えるぞ」という統一意志が感じられるだろ、、、ところがこれを俺が崩してたくさんの石コロにして、、、それをまた積み上げようとすると、石コロはそれぞれ別々な意思を持つようになって、、、「俺は四角の大きな塊りだから角石になる」とか、俺は三角だからこの上の隙間に収まりたい」とか、、、もう壁積みには到底不向きなクズ石は「俺はもう積み上げられるのはまっぴらだから下の斜面で眠りたい」とか主張するワケだよユウジ、、、面白いなあ、、、石の意思はどこまで広がっていくんだろうなあ、、、。
山を形作っている時、それは大きな塊りで確かに岩山という全体意識とでも云うべき「意思」を持っているんだが、、、それを崩すと沢山の岩石になって個々の「意思」を持つようになる、、、大きなモノもあれば小さなモノもあって、それに崩しているうちに砂粒になってしまうモノもある、、、ここの泥岩は柔らかいから、半分くらいは粘土の粉になってしまう、、、そう云えば3番目の泥岩は粉になると黄色っぽい粘土になって、、、これは確かに壁土になりたいと云ってるんだよユウジ、、、ハハハ、、、Pillar婆ちゃんの牧草と交じり合って聖堂の壁になってもうひと働きすると云うワケだ!
午後は雨になって、、、それで早めに作業を切り上げ台所のストーブの側でiPadに向かってる。
iPadに入れてある写真集を見直していたら上の写真があった、、、右腰にぶら下げている小型のインパクトレンチはKENが日本を出発する時にくれたモノでな、、、人差し指の後遺症で右手に力が入らないから、この軽量インパクトは随分重宝してるんだ、、、高所作業で重たいインパクトは辛いからなあ、、、それとこの写真の梅干し
これは俺がナロガに移住するときサキちゃんが手作りしてくれたモノでなあ、、、指を怪我してずっと料理も出来なかった間、この梅干しのお陰で随分助かったんだよ、、、それが一昨日最後の一粒になって、食べる前に写真に撮ったんだよハハハ。
本人たちは気づかないだろうが、こういう誠心のこもった贈り物は随分人助けになるんだよなあ、、、
話は飛ぶが、、、上海万博の2年ほど前だったと思うが、俺は友人で実業家であるE氏の頼みで上海近郊の松江市という処で、循環型自然公園を作りに行った事があるんだ。
面積は2万平方メートルくらいで中央に湖を掘って、掘り取った土で築山を作り、雑木林や段々畑や竹林、水田を配置し、、、湖の水をソーラー電気で山の頂上から流し落として水路を循環する間に自然浄化するという計画だった、、、松江市は上海市のベッドタウンとして急激に発展していてね、、、その土地のすぐ側まで巨大マンション群が押し寄せていた。
その土地の隣は印刷工場でね、、、泊まり込みの作業員は掘ったばかりの湖の溜まり水で身体を洗ったり炊事をしたりしていたんだ、、、隣が印刷工場!
地下水位がひどく高くてね、、、1メートルも掘ると水が湧いてくる、、、それで俺は水位を下げるのは諦めて、むしろ水位を隣地よりも高くして汚染水の侵入を遮断しようと考えたワケさ、、、
なかなか良い感じで工事は進めていたんだが、E氏の共同事業者だった中国人の実業家Rが悪党でね、、、結局マンション用地に売り飛ばそうと画策して邪魔になった俺を不法滞在者だとして警察とグルになって追い出したんだよ、、、
俺は最初Rに会った時から「ああこいつは虚業家だな」と察してE氏にも忠告はしていたんだよ、、、それが案の定そういう結果になって悔やんだワケだが、、、その時、【師】は俺にこう云ったんだ「誠心でやった事で無駄になる事はひとつも無い」とね、、、俺は今になってそれをヒシヒシと感じてるんだ。