廃屋の薔薇(イバラ)

俺は寺に入ってからあちこちで道場を作り、その後農哲学院の拠点も作ってきた。いずれも廃屋を改修したり、僻地の開拓だったりしたが、どこも薔薇や刺草(イラクサ)など棘のある草や蔓で覆われている。

此処は特に酷くて鋭い棘がビッシリ生えた蔓が縦横無尽に茂っていて、まるで俺を追い出そうとしているみたいだ。いや、「みたいだ」じゃなくて、確かに人間の侵入を拒んでいる。

ユウジ、人間が切り開いて放置した場所には必ず最初に棘のある植物茂る。これは傷ついた大地を再生するために、まず人や動物の侵入を許さない為だ。そうやって自然は色々な植物が繁茂するのを守るわけだなあ。

それを見ると、俺はいつも「此処を開いて良いのだろうか?」と、自問してしまう。いかに生きる為の場だと云っても、大地に鍬を入れることそのものが、大地を傷つける行為であることは明らかだからなあ、、、、、。ユウジ、人間とはつくづく因果なイキモノだなあ、、、。

テントの基礎造り

 

廃屋の側に、なんとか8メートル×10メートルくらいの平地ができたので、ここにテントを設営する為の基礎を据える。床板を地面から浮かせないと板がすぐ腐ってしまうからね。

とにかく雨露をしのぐ場所が全く無いから、道具類も炊事道具も雨晒しでなあ!こちらのシートは本当に不良品で、すぐ破れてどうしようもない。日本の1番安いブルーシートより水を通してしまう。

テントは英国製の安いヤツをゆうがネットで買った。5万円くらいなのでどれだけ保つか、、、とにかく夏過ぎまではなんとか暮らせるようにしないとなあ。

斜面造成

テントを張るにも平地が無いから、ユンボで斜面を切り盛りして台地を造る。

当分テント暮らしになろうから、板床を作ってその上にテントを張ることにした。此処は南部とは違って雨も降るし、山なので霧がかかる事も多いから、地面に直接シートを敷いたのでは身体が冷えるからね。

セメントや砂、床張りの材料は2時間ほど離れた街まで買い出しだ。俺のバンは300キロ積みだから、500キロ積みのトレーラーを引いて、無理矢理1トンほどの資材を運んだ。

他の車がバンバン追い越して行く道路を、タイヤがバースしないかヒヤヒヤしながら時速120キロで走った。

昨日と今日は霧が深く、蔬路雅 では20メートル先は見えない。霧のなかで夕食。さすがに冷えて、慌てて車に駆け込んでヒーターで暖まった。

 

スタート

ユウジへ

俺がブログを書いてみようと思ったのは、君が俺の話を聴きたいと言って、ブログというものを開いてくれたからだ。

俺は君と会って「地球上で人間だけが自らの生存に必要な空気と水を汚し続けながら増え続けている、、、俺たちは、云わば地球にとってのガンみたいな存在だ。ところで君もそのひとりだが、君は人類という存在に意味があると思うか?」と問うた。もちろん君は存在にどんな意味があるかは即答できなかったが、その瞬間から俺の問いには真剣に向き合う気配は感じられた。

俺はこれまで多くの若者にこの問いを投げかけたてきたが、みなキョトンとして質問の意味すら掴めない者がほとんどだった。若者のみならず、俺と同年代の人々さえ、この質問をすると、ほとんどの人が怪訝な顔をする。しかし俺は自分という存在の意味を知ろうとしない方が訝しくてならない。そもそも人は「存在の意味」を求めて生きている動物なのに、自分が何を求めて生きているのか考えようともしないのは何故だろう。

ユウジ、俺はそんな世相が嫌になって此処に来た。天が俺の死場所(活き場所)として、この場所を用意して下さった。

天はこの地を蔬路雅 (Naroga)と名付けられたが、蔬路雅 という名には「本然の自分を取り戻す場所であり、本然の心と身体を取り戻す場所であり、本然の人間を産み出す場所である。」という意味がある。それを知れば君も俺が何を目的に此処へ来たかが解るだろう。

ユウジ、俺はもう何も話さず何も聴かず、この地で納得のいく余生を過ごすつもりだったのだ。しかし君が出発の3日前に「存在の意味を知りたい」と真剣に言った。俺は日本を発つ前に君のような若者と出会えた事が嬉しくなってこのブログというものを書く決心をした。

1人でもいい、真剣に耳を傾けてくれる若者がいるなら、日々の想いを書き送ってみようと思ったのだ。だからこのブログは云わば俺から君への手紙だが、返信はしないでただ読み飛ばしてくれ。俺は書くなら何の忖度も無しに言いたい放題を書きたいからな。

 

蔬路雅 Narogaはスペイン北部のペレイラという僻村にある。村には数軒の農家があって、山々の斜面に肉牛を放牧して暮らしてる。蔬路雅 の土地はその斜面の一部で、長く放牧もされていなかったので、全体がイバラで覆われ、人はおろか獣の侵入も赦さない土地だ。

此処には崩れかけた石積みの廃屋があるが、斜面にそのまま石を積んだモノだから残った壁も歪んでいて。これを修復して住居を造る事は出来ない。地盤は土木業界では「腐れ岩」と呼ばれる崩れやすい岩で、土地造成には地滑りし易い厄介なシロモノだ。正直、初めてこの地を訪れた時、「さすが天はお見通しだな!カルマ大きい俺にはやはり楽な余生は与えられないなあ!」と、妙に納得したよ。

俺はこの地に住むために以下の計画を立てた。

①とりあえず住む為に、テントを設営できるだけの平らな場所を造成する。

②作業小屋を作って住居を造る準備をする。

③住宅地の造成工事。

④石積みの住居建築。

これが当面の作業工程だ。僻村なので近くにアパートもホテルも無いし、そんな処に泊まっていては予算も足りなくなるから、当面は車で寝泊まりする事にした。なにしろ予算150万円で建築と生活費全部を賄おうという計画だから、ケチケチ作戦はしょうがない。

到着2日目、愛機(コマツMR30)で、とにかくテントを張れる平地造りに取り掛かった。俺がゴルフ場造成をやっていた頃は、こういう小さなユンボは「耳掻き」と呼んでいたものだが、、、今やこの「耳掻き」が大きな助っ人で、これがなかったらトイレの穴ひとつ掘れないよ!この機械は俺の義弟が買ってくれたモノで、スペインでは700万円だ。この岩山の斜面に取り組んでみると、つくづく機械の有難味を感じるわ!